もの忘れとは
もの忘れは、年をとれば誰しもが経験するとされる生理的な現象でもあります(良性健忘)。ただ、これに似た症状というのは、認知症でも見受けられるので注意が必要です。
そもそも認知症とは、何らかの原因によって、脳が機能低下を引き起こしている状態です。この病状が進行すると、日常生活に支障をきたすようになります。現時点では、認知症を治癒させる治療法というのは確立されていません。ただ認知症の進行を抑制させる薬というのはあります。したがって早めの気づきというのは大切なのですが、良性健忘、軽度認知障害(MCI:認知症ではありませんが、放置が続けば認知症の発症リスクは高くなります)、認知症初期というのは、非常に区別がつきにくいという特徴があります。
認知症であれば、早期に発見し、病状の進行を遅らせる治療を速やかに行う必要があります。したがって、もの忘れの症状が目立つようになったと感じられた場合は、認知症の診断、あるいは治療を行う当院のもの忘れ外来をご受診ください。
このような症状の方はご相談ください
- 人や物の名前が出てこない
- 大事な物(財布、キャッシュカード 等)をよく失くしている
- 探し物をよくしている、置忘れが多い
- 趣味等、好きなことにも意欲がわかない
- 同じことを何回も話したり、聞いたりしている
- 怒りっぽくなっている など
軽度認知障害(MCI)とは
認知症によく似た症状(もの忘れ等)が現れているものの、認知症の診断基準には至ってない状態を軽度認知障害といいます。この場合、日常生活で何らかの支障をきたしてはいませんが、このまま放置が続けば約半数程度の方は認知症を発症するようになります。
よくみられる症状としては、日常行うルーティンの作業の段取りが悪くなるということがあります。また、もの忘れが最近多くなったことについて自覚している、あるいは同居している家族が気づくということがあります。
上記のような症状に心当たりがある方は、一度当院をご受診ください。その結果、MCIと診断されたとしても適切な治療をすることができれば、認知症の発症を防ぐこともできますし、認知症であったとしても進行をより遅らせることにもつながります。不安だという方は、お気軽にご相談ください。
認知症とは
何かしらの原因によって、記憶障害をはじめ、脳の機能がだんだん低下していき、それに伴って日常生活や社会生活を送ることが困難になっている状態を認知症といいます。この認知症は、年を経るにしたがって患者数が増えていきます。
なお認知症を発症する原因はひとつではなく、70種類以上あるとされています。その中でも患者数が多い4つのタイプを四大認知症と呼び、これらで全認知症患者さんの9割以上を占めるとしています。それぞれ4つの認知症の説明に関しましては、次の通りです。
アルツハイマー型認知症
日本人の全認知症患者さんの6割程度を占めるとされる認知症です。これは、脳内で作られるアミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が、排除されずに脳内で蓄積していくことで、次第に脳の神経細胞が死滅していき、脳が委縮するようになるというものです。これによって、記憶障害(もの忘れ 等)や見当識障害(時間や今自分がいる位置が把握できない 等)などの中核症状が現れ、それに伴って周辺症状として、妄想、徘徊、暴力(暴言)、幻覚、失禁、抑うつなどの症状もみられるようになりますが、周辺症状については個人差が大きいとされています。
病状が進行すると、日常生活において介助が必要となります。さらに進めば、会話をするのも難しくなって、寝たきりになるなど、日を追うごとに衰弱していくようになります。
脳血管性認知症
全認知症患者さんの2~3割程度の患者数とされ、動脈硬化の促進による脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の発症による脳血管の損傷がきっかけとなって起きる認知症です。ちなみに動脈硬化促進の原因は、喫煙、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症 等)の罹患等によるものです。
主な症状は、認知症の症状(記憶障害等の中核症状、妄想、徘徊や暴力等の周辺症状)のほか、歩きにくい、手足が麻痺する、呂律が回らないなどがみられます。この場合、損傷を受けた部位に伴って症状が見受けられるようになるので、認知機能の障害というのは部分的です。そのため、あることは問題なくできるのに、ほかのことはできないという状態がみられるようになります。このようなまだら認知症になるのも同タイプの特徴です。
レビー小体型認知症
レビー小体と呼ばれるたんぱく質が脳内に蓄積してしまい、これが脳内の神経細胞を減少させてしまうことで、様々な認知症の症状がみられている状態をレビー小体型認知症といます。
よくみられるのは、認知機能障害(記憶力、理解力、判断力の低下)を中核症状とし、幻視、妄想、睡眠時の異常行動(大声で寝言を言う、眠った状態で歩き回る 等)のほか、パーキンソン症状(手足が震える、体の動きが遅くなる 等)などがみられるようになります。
前頭側頭型認知症
ピック病とも呼ばれ、脳の中の前頭葉と側頭葉が委縮してしまうことで発症する認知症です。40~60代という比較的若い世代が発症するのが特徴です。脳の萎縮については、脳に異常なタンパク質が蓄積することで起きるようになります。
主な症状ですが、相手の話を聞かずに一方的にしゃべるなどの自制力の低下をはじめ、浪費、過食、徘徊などの異常な行動、感情が鈍くなる等人格の変化がみられます。ただ、アルツハイマー型認知症のような記憶に関する障害が現れることは、ほぼないとされています。